直木賞作家深田祐介さん講演会
先祖のふるさとで地球を語る
深田正義さんの出版祝し
25日長誉館
直木賞作家・深田祐介さんの講演会が、25日午後1時から岡崎・長誉館(中町6丁目)で開かれる。長誉館を本拠にする「おかざき塾」代表・深田正義さんが『新三河物語 風・醸す』を出版したことにちなみ、講演のタイトルは〈深田正義君『新三河物語 風・醸す』発刊おめでとう では岡崎で「新地球物語」を語ろう!〉。講演会後、『風・醸す』の出版を記念した交流会が開かれる。主催は志葉会と、おかざき塾。
深田祐介さんは昭和6(1931)年、東京・麹町に生まれた。早大卒業後、仕事の傍ら創作を続け、文学界新人賞、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。「炎熱商人」で昭和57(1982)年上期の直木賞を受賞し、これを機に日本航空を退社、作家活動に入った。
深田祐介さんの先祖は江戸中期、岡崎の酒蔵から江戸へ移り御用商人となった。創業320年近い歴史を持つ丸石醸造の社長、会長を務めた深田正義さんとは遠い親戚だ。
深田祐介さんはおかざき塾の特別顧問。『風・醸す』の出版に当たり、〈酒は「文化」の起爆剤〉と題した応援メッセージを寄せた。
――(日本航空時代に)欧州に暮らした経験から、酒が「文化」であることを実感した。ドイツのビアホール、フランスのカフェ、イギリスのパブ。そこは庶民文化の中心地で、酒を起爆剤にコミュニケーションが成立し、コミュニティーが形成される。深田正義君が酒造業の経験から「おかざき塾」を開き、地域文化に貢献しようと決断したのは、酒の本質へ回帰しようという意思の表れだろう――。
深田祐介さんは視野を世界へ向け、日本のあり方や世界の情勢、地球的課題などについて講演する。
当日は午前11時に開会。昼食後に講演会、3時から出版記念交流会。参加費は昼食代を含み一般2,000円、学生500円。準備のため、参加希望者は20日までに志葉会主宰の辻本桂子さん(0564―32―1053)か、深田正義さん(0564―24―7763)へ。
深田正義さんが本のもとになる原稿を書いた背景には、酒類販売の規制緩和があった。平成13年から15年9月にかけ段階的に緩和、自由競争の名のもと大型店やコンビニが酒を置き、店をたたむ酒屋も出てきた。
「地域のことは酒屋さんに聞け」と言われていたのは、そんなに遠い昔のことではない。しかし「規制緩和で酒店の仕組みは崩れ、社会もきしみ出したのです。残ったお店が地域の人たちと誇りを共有し、ふるさと回帰につながる営みができるようにしたい」。
深田さんは丸石醸造から地域のプライベートブランド(PB)の酒「三河物語」シリーズを送り出すのと並行し、多くの藩を治めた三河武士や徳川家康のふるさと、東西三河を歩いて取材。戦国から江戸太平の時代への歴史を三河に重ねた。PB酒と同じ「三河物語」のタイトルでつづり、1年に4度、丸石醸造の社外報に掲載した。
「今回、その内容を整理しました。これは紀行文ではありません。ふるさとには、地に足をつけて生きた人の誇りと歴史があります。過去から今につながるまちづくりを深く考えてみようという本の目的は、おかざき塾で学ぼうとしていることなのです」。深田さんは出版の意義をこのように語った。