岡崎学園100周年
60年ごし卒業証書を授与
地震で犠牲の元生徒遺族に
岡崎市稲熊町、人間環境大学岡崎学園高校の飛翔館で13日開かれた学校法人岡崎学園の創立百周年記念式典で、東南海地震の犠牲になった元生徒の遺族に60年越しに卒業証書が贈られた。
東南海地震は太平洋戦争末期の昭和19(1944)年12月7日に起きた。人環大岡崎学園高校の前身、岡崎高等家政女学校本科一部の1年生だった三宅サワ子さんと山下ツヤ子さんは、学徒動員で働いていた日清紡針崎工場で倒壊したレンガ塀の下敷きになり、死亡した。
2人は21年春に卒業の予定だったが、戦後の混乱で卒業証書は渡されなかったため、100周年の記念式典で授与されることになった。
卒業証書を受け取ったのは、三宅サワ子さんの甥おいに当たる野沢戦二さん(61)=同市中町。野沢さんによると、三宅さんは旧足助町に実家があり、当時、岡崎市内に下宿していた。死亡の知らせを聞いた家族が遺体を引き取り、馬車で足助まで運んだという。
この日は、当時の担任だった久米(旧姓・鈴木)サキさん(81)=知多郡東浦町=も同席し、「三宅さんは、とてもやさしい生徒で、地震のあった当日の朝も『今度の日曜日には実家に帰ります』と話していたことを覚えています」と振り返った。
白井理事長から卒業証書を受け取った野沢さんは「母親のアルバムでサワ子さんの写真を見たことがあります。これから足助の実家に行って仏壇に供えます」と感慨深そうに話していた。
この日出席できなかったもう1人の犠牲者、山下ツヤ子さんの遺族には後日、卒業証書が届けられる。