画集出版
「夫婦展」10年の節目
夫 切り絵・妻 創作アプリケ
岡崎市両町の山田利一さん(76)、眞智子さん(70)夫妻が画集『切り絵・創作アプリケ』を出版した。夫妻は、平成8年から「夫婦展」と銘打った展覧会を続けている。利一さんが切り絵、眞智子さんが創作アプリケと道は違うが、ともに歩んできた足跡を、今年9月に開く第10回展を前に画集にまとめた。
利一さんは、昭和23(1948)年から市内の小中学校で美術教師として勤務。平成元年、同市美川中学校長を最後に退職。その後は、昭和39年から始めていた切り絵を学校や地域、老人施設などで指導をしてきた。
眞智子さんは、小学生のときから図工が得意で、中学3年のときには食品衛生ポスターで、当時の厚生大臣賞をもらったこともある。昭和62年に宮脇綾子さん主宰の「綾の会」に入会して、本格的に創作アプリケの道に入った。
■愛娘の早すぎる死
夫妻がともに展覧会を開くきっかけになったのは、愛娘まなむすめ厚子さんの思いがけない24歳の死だった。厚子さんは平成2年9月12日、がんのため7カ月の闘病の末、帰らぬ人となった。
結婚相手も決まって幸せの絶頂にあった夫妻は、茫然自失、それから2年間、何も手に付かぬ毎日を送る。
厚子さんが亡くなってから約3年後、夫妻は発心して四国88カ所霊場巡りに出発した。結願の報告に訪れた高野山の宿坊で朝のお勤めを終えたとき、「今までの無気力な重い霧が晴れ、心に明るい光がさした。人は目標を持って生きることが大切だ。夫婦で創作という目標を持って助け合っていこう。それが厚子への供養だ」と、気が付いたと利一さん。
■7回忌に初展覧会
厚子さんの7回忌の日に最初の切り絵展を開催。このときは、眞智子さんは賛助出品だった。
正式に「夫婦展」を名乗ったのは、平成8年の展覧会から。夫妻の1年は、9月に展覧会を開き、その秋取材旅行に出かけ、11月から制作に入り、翌年に展覧会というサイクルができている。
利一さんは、かやぶきの家のある風景を、眞智子さんは道祖神を求めて長野、岡山、群馬、京都などを取材した。車のフロントには元気なころの厚子さんの写真を飾って。
「わたしたちが『夫婦展』を開けるのも娘のおかげ。旅はいつも『同行三人』と思っています」と眞智子さんは、しみじみ話す。
画集は、縦25センチ、横26センチの大きさで、オールカラーの124ページ。元美術教師として印刷時の発色にこだわり、原画が忠実に再現されている。
利一さんの切り絵は独特の手法で彩色され、かやぶき屋根はもちろん、点景に描かれた樹木や草花、そして人物が、過疎の村落の雰囲気をよく伝えている。
眞智子さんの作品は、ボロブドール遺跡の壁画レリーフに材をとったものと、長野、群馬の道祖神をモチーフにしたものが収められている。布の色や質感、柄を生かす感覚に優れ、模写の域を超えて芸術性を感じさせる。
1,000部を作製し、約400部を知人や市内の小中学校に贈る。希望者は山田さん宅(0564―23―1293)へ。1冊3,500円。