ホタル育ては山育て
初の自家飼育 岡崎・ちせいの里
17日住民ら放流式
岡崎市茅原沢町の住宅地・ちせいの里で、住民組織「せせらぎ愛好会」が17日、ゲンジボタルの幼虫を〈ほたるの里〉のせせらぎに放流する。平成13年秋に愛好会を結成してからここ3年は、38年間人工飼育を続けている河合中学校から幼虫をもらっていた。しかし今回は、愛好会の代表・丸山健さん(41)が自宅の庭で産卵させ、飼育に初挑戦した。昨夏の酷暑で多くが死んでしまったが、飼育協力金などで支援した住民は6月初めの羽化を心待ちにしている。
丸山さんは同市本宿町に医院を持つ歯科医師。朝と夜、休日が世話をする時間だ。河合中や日本ホタル研究会の古田忠久会長(元河合中校長)に指導を受けながら飼育した。
茅原沢町の総代に了承を得たうえで昨年6月8日、近くの町公民館横の小川で自然発生の成虫を捕まえ、産卵箱へ。産卵箱は底に金網を張り、卵を産み付けるミズゴケを入れた木箱。卵から孵ふ化した幼虫は木箱から、水が入った受け皿の容器に落ちる。
毎日、ミズゴケに霧を吹きかけ、6月14日に産卵を確認した。5匹のメスが産んだ卵は、おおよそ5,000個。1匹が500〜1,000個を産むといわれ、まずは順調。30日、親はすべて死んだ。
7月3日、孵化。カワニナを飼育する水槽から稚貝をつまんでは幼虫に与え続けた。その数は1度に2、300。孵化が進んでいない河合中に幼虫約2,000匹を“里子”に出した。
難関は夏だった。水槽をヨシズで囲って水を換え、シャワーとエアで空気を送り続けたが、「水温が上がり、酸素不足になったのか。餌も足りなかったか…」と丸山さん。水槽の水温は30度を超えた。9月下旬には、約3,000匹から、見た目で数百匹に減っていた。「自然界で卵から成虫になるのは1、2%のようです」。その後も死んだ。
愛好会の目的はホタルを飛ばすことではなく、ホタルを介した住民の交流。全世帯の半数近くの45世帯が会員だ。
今年は、せせらぎの上流の杉を約50本間伐、日光を当てて土砂の流入を防ぐ下草を茂らせるようにした。「地主さんがよく承諾して下さいました。ありがたいことです」。昨年と同じように、せせらぎの土手に新しい土を盛るなど、会員は生育環境を整備してきた。丸山さんは「ホタルを育てることは、山を、川を育てることだ」との思いを強くしたと言う。
愛好会が「もどし式」と呼ぶ放流は午前10時から。地区役員や河合中、生平小の校長・教頭、岡崎ゲンジボタル河合保存会の粟生勇嗣会長らを招く。放流する幼虫は100匹ほどになりそう。昨年のホタルの“初舞い”は6月3日だった。今年もそのころに幻想的な光を放ちそうだ