矢師の小山さんが 伝統的稀少工芸品功労者褒賞受賞
完成までに70工程 伝統の技術技法を継承
平成16年度の伝統的工芸品産業稀少工芸品産地功労者褒賞に岡崎市福岡町の矢師、小山金一さん(66)が選ばれ、11日、受賞の報告に市役所を訪れた。
同賞は、産地としては規模が小さい地域で長年にわたって工芸品の維持、発展に努めている人を表彰するもので、伝統的技術・技法の継承、向上や、後継者の育成、確保などの功績が評価の対象となる。今年度の受賞者は全国で10人。今月3日に東京都のホテルメトロポリタンで授賞式があった。
伝統の技を誠実に受け継ぐ「小山矢」は、明治三年に初代・小山嘉六氏が創業、約135年の歴史を誇り、小山さんで五代目。矢の材料には岡崎の良質な矢竹を使用。青竹を乾燥させ、節や目方を合わせ、火に通して曲がり具合や強度を調整、漆を塗ってさらに強度を均等にさせるなど、竹を切り出してから完成までに2年かかる。70工程にも及ぶ昔ながらの製法を伝える矢師は全国でも十数人しか残っていないという。
積極的に見学者を受け入れている小山さんは、各地で実演を行い「やはぎの矢」の宣伝普及に努めている。また、各種の交流事業のために“蟇目ひきめ鏑矢かぶらや”を寄贈するなど産地振興のために様々な活躍をしている。この矢は射ると音を出しながら飛ぶことから「魔手を退散させ、幸福を招き入れる」といわれ、特に高度な技術が必要とされる。
おかざき匠の会の一員でもある小山さんは、愛・地球博にも参加。徳川家康の命日にあたる4月17日に、小山さんの作った矢が徳川宗家十八代徳川恒孝さんによって放たれる。
柴田紘一市長は「小山さんの受賞で改めて伝統産業を大事にしていかなければいけないと感じる。万博で忙しくなりますが、がんばってください」とたたえた。
小山さんは「ショウをいただけると聞いて何かの証あかしかと思っていたが、褒賞で驚いた。これを励みに一層伝統の技に磨きをかけていきたい」と抱負を語っていた。