東海愛知新聞バックナンバー

 5月13日【土】

「自分が主人公の物語」

岡崎出身 大学3年の溝口さんが自転車で欧州・アジア走破

岡崎市出身で豊橋技術科学大学機械工学課程3年の溝口哲也さん(20)がこのほど、自転車の輸入販売などを手掛けるダイアテック社や自転車ブランド「BRUNO」などによる自転車旅応援企画に参加し、欧州とアジアの16カ国、計約7300キロを超える道のりを走破した。8月には、南米でアンデス山脈を経由してペルーからチリまでの約5000キロの自転車旅も予定しており、準備を進めている。(大山智也)

同企画は「若者よ旅に出よ!」と題して、29歳以下を対象に3カ月間に及ぶ海外での自転車旅を支援するという取り組み。当時19歳だった溝口さんが応募したところ、審査を経て採用された。

長期休暇などの都合で、夏休み中の2カ月間の欧州旅と春休み中の1カ月間のアジア旅に分割して実施。昨年8月下旬〜10月上旬に欧州、今年3月にアジアを訪れた。

欧州では、スペイン・バルセロナを出発し、世界的な自転車レース「ツール・ド・フランス」のコースの1つとしても知られるアンデス山脈を越えながら、欧州を反時計回りで巡る形で5230キロを走った。道中は野宿をしたり、旅先で交流を深めた人の自宅に泊めてもらったりしながら、大きなトラブルなくゴール地点のフランス・パリにたどり着いた。

アジアでは、香港―タイ・バンコク間の2133キロを走行。欧州に比べ路面状態や衛生状態などに悩まされ、2度の食中毒にも見舞われた。それでも、自転車に興味を持って駆け寄ってくる子どもをはじめ、温かい人との交流に恵まれ、初めて見る景色の連続に心躍った。

父親の転勤により、タイ・バンコクで3年間を過ごした中学時代。現地の日本人学校を卒業すると同時に岡崎に戻り、高校は県立岡崎西高校に進学した。

バンコクでは自転車に乗る機会が全くなかったが、自転車通学となる高校入学をきっかけに、自宅近くの自転車屋「サイクルマスター」(同市六名東町)に足を運び、デザインに惚れてマウンテンバイクを購入。通学だけでなく、趣味でも自転車に乗るようになった。

1年の秋には、同店を通じて知り合った人からロードバイクを譲り受け、自転車競技を始めた。高校総体出場を目標に、県内の大会などで実力を伸ばした。

自転車旅を始めたのもちょうどこの時期で、春休みに友人とともに関東までの往復約1500キロの旅に挑戦。2年の夏休みには、北陸地方を経由して近畿地方に向かう計2000キロ近い道のりを、単身野宿しながら10日以上かけて走破した。

3年の時に目標だった高校総体の県予選に出場するも、無念の敗退。ここから自転車競技に一区切りをつけ、自転車旅に力を入れるようになった。

大学進学後は、1年の春休みを利用して岡崎から北海道稚内市まで片道約2200キロの旅に挑戦。当時目標としていた海外での自転車旅の試金石と位置付け、厳しい寒さに耐えながら野宿したり、時には雪山に迷い込んで遭難しそうになったりしながらも、20日かけて稚内市に到着した。この過酷な旅をやり遂げた経験が自信となり、自転車旅の募集に申し込んだ。

「昔はどちらかといえば人見知りだったが、旅をするうちに知らない場所に行って、知らない人に会いたいと思うようになった」と語る溝口さん。海外の旅では言葉がほとんど通じないため、身振り手振りといった工夫をしながら懸命にコミュニケーションを図った。また記録写真を撮影するためのカメラを紛失し、途方に暮れた時も、現地で意気投合した人が快くカメラを提供してくれた上に「若い時に広い世界を見て回ることは素晴らしい。応援するよ」と背中を押してもらったという。

夏に南米挑戦

アンデス山脈への挑戦は、世界を自転車で旅するという自身の夢の1つの到達点と位置付ける。「自転車は自分が主人公の物語。今回は気候、地形、治安、どれをとっても最も過酷な旅になるが、死力を尽くして乗り越え、旅の魅力や達成感を一人でも多くの人に伝えたい」。

今回の旅は個人での挑戦となるため、協賛者・支援者を募集中。問い合わせは、Eメール(groovy722 @ gmail.com)で。