東海愛知新聞バックナンバー

 3月12日【日】

岡崎での調査生かす

『新・敬語論』を刊行
東京外語大名誉教授の井上さん

東京外国語大学の井上史雄名誉教授(74)がこのほど、敬語についてまとめた書籍『新・敬語論―なぜ「乱れる」のか』を刊行した。岡崎市内で55年の間に3回行われた敬語調査の結果も深く関わっており、井上さんは「貴重なデータを得ることができた。岡崎の皆さんに感謝したい」とコメントを寄せている。(竹内雅紀)

岡崎での調査は国立国語研究所(東京都立川市)が昭和28(1953)年、47年、平成20年にそれぞれ約400人を対象に行った。同所のサンプリング調査において400人ほどの協力が得られることが理想とされており、協力的だった岡崎市が該当した。

調査では無作為に抽出したランダム形式のほかに、同一人物を3回とも調査する追跡調査や経年調査も実施。55年間で3回とも協力した20人には同じ質問をし、年齢による敬語使用の変化を検証した。

荷物預けの場面を例に挙げると、昭和28年に16歳だった人は「この荷物を預かってください」。同じ人が19年後の35歳では「ちょっとすいませんが、この荷物を預かってください」になり、そこから36年後の71歳では「あのー、ちょっとほかへ行きますので、一時この荷物を保管しておいていただけませんでしょうか」と変化した。

井上さんによると、年齢を重ねるほど、話が長くなり、敬語を使う頻度が高いという傾向が確認できたとしている。

このほか、書籍では近年多用される「○○ていただく」や「○○でよろしかったでしょうか?」などについても触れている。

NHK出版から発売。新書判、240ページ。842円。